本記事で分かること
- 実際に審査経験を積んだ元公庫職員が感じる、日本政策金融公庫の融資のメリット・デメリットが分かる。
- デメリットもあるものの、メリットのほうが大きい。
メリット
スピーディーな対応
日本政策金融公庫から融資受けるまでには約1ヶ月ほどかかります。民間金融機関では1ヶ月以上かかることが多いことを考えれば、相対的に日本政策金融公庫のメリットとなっています。
すでに日本政策金融公庫から借入がある方は審査フローを短縮することもでき、ケースによっては2週間ほどで融資実行されることもあります。もはや消費者金融並みのスピードです…
迅速な対応は日本政策金融公庫内でもかなり意識されていることで、支店によっては担当した案件を素早く処理しているかを確認しているところもあります。実際に僕がいた支店では、担当者ごとに申込から決裁まで平均で何日かかっているのかを算出して、課長が管理していました。
民間金融機関の呼び水
日本政策金融公庫が融資をしていることで、「必要最低限はクリアした事業者だ。」と民間金融機関は事業者を一定信用でき、この結果融資が受けやすくなるのです。
金融機関へ初めて融資を申込すると、当然ですが金融機関はあなたのことを何も知りません。
このため、
- この事業者は本当に信用できるのか?
- そもそもちゃんと事業の実態があるのか?
というところから入念に調査を行うのですが、これがけっこう時間がかかります。
もちろん民間金融機関からすでに借入があり、初めて日本政策金融公庫から融資を受ける場合も同じ効果は期待できます。ただ、融資に比較的積極的な日本政策金融公庫から順に融資を受けるほうがより効果的です。
比較的審査のハードルが低い
- 公庫の審査がガバガバだ!
- 書類を作りさえすれば審査は通る!
など、かなり誇張された表現を見かけます。これは信用しないでください。
日本政策金融公庫でも融資を断ることはあります。正しくは「しっかり準備をすれば融資は通過できる。」というのが正しいです。
無保証での融資が受けられる
多くの金融機関では代表者保証をお願いされることが多いはずです。
これに対して日本政策金融公庫では、創業融資ならば原則無担保・無保証で融資を受けることができます。
また創業融資でない場合でも「経営者保証免除特例制度」「資本性ローン」を適用することで、無保証での融資を受けることができます。「経営者保証免除特例制度」を適用するにはいくつかの条件を満たす必要がありますので、希望しても適用できないことがあります。
無保証となれば、万が一事業が上手くいかず会社が倒産してしまったときに、代表者個人に返済の請求がいかないことになります。
代表者保証についてあまりイメージできてない方は、代表者保証について解説した動画がありますので、参考にしてみてください。
保証協会の枠を使わない
日本政策金融公庫から融資を受けるにあたって、信用保証協会の保証は利用することはできません。
ポジティブに考えれば日本政策金融公庫からの融資に信用保証協会の枠を使うことはありませんので、「資金調達はしたいけど、信用保証協会の枠は残しておきたい…」と考えている事業者にとっては日本政策金融公庫からの融資は有用です。
実際に日本政策金融公庫を利用するメリットをお客様に案内するときには、これを営業文句として使っていました。
デメリット
財務内容で金利が変化しない
民間金融機関では財務内容が良いと金利が低くなったり、財務内容が悪いと金利が高く設定されたりすることがあります。
財務内容が悪いということは倒産する確率が相対的に高いことになり、倒産の危険性が高い企業に融資をするのは金融機関にとってはリスクが高いのです。
金融機関はリスクに見合ったリターン(利益=利息)がないと融資しませんので、リスクに見合うように高めの金利が設定されるのです。
これに対して日本政策金融公庫(国民生活事業)は財務内容によって金利が変動する体系にはなっていません。
財務内容が良い企業と悪い企業でも、同じ融資商品が適用されるならば金利は同じになります。財務内容が良い企業にとっては少し物足りないと感じるときが来るはずです。
初めての申込だと提出書類が多い
メリットで挙げた「民間金融機関の呼び水効果」でも触れたように、初めて日本政策金融公庫から融資を受ける際は「信用できる事業者なのか?」をきちんと調査するため、書類が多くなってしまいます。
書類の準備に時間がかかってしまい、事業の運営に集中できなくなる時期が長引いてしまいます。
ただ、書類が多いと感じるのは初めて申込のときだけですので、「書類が多くてめんどくさそうだから、日本政策金融公庫からの融資はやめよう。」と選択肢から外すのは非常にもったいないです。
「できるだけ負担なく融資申込ができるようになる」ことが本メディアを立ち上げた目的ですので、この機会に身に付けていきましょう。
日本政策金融公庫の融資に関して言えば、一度身に付けてしまえば2回目、3回目は簡単です。
経営相談には弱い
僕が日本政策金融公庫で勤務していたころ、相談相手がなかなかいないためか、特に創業間もない事業者から経営のアドバイスを求められることがよくありました。
日本政策金融公庫(国民生活事業)では、
- 融資先数が多くそこまで手が回らないこと
- アドバイスができる専門知識を持った職員がいないこと
から、経営相談があっても商工会や商工会議所へ繋ぐことしかしていません。
日本政策金融公庫の職員から経営のアドバイスがもらえるとは期待しないほうが良いと思います。もしかすると日本政策金融公庫だけではなく、民間金融機関にも当てはまることかもしれません…
担当者のレベルにバラツキあり
融資を申し込むと、課長が提出書類に目を通して、どの職員に審査を担当させるかを決めています。どのような職員が担当になるかは、正直に言って“運”です。
例えばご自身がIT系の事業を経営しているにもかかわらず、IT系に疎い職員が担当者となれば、事業内容を理解してもらうだけでも時間が掛かってしまいます。ただでさえ短い面談時間で事業内容の理解だけで終わってしまっては不完全燃焼となってしまいます。
職員全員があらゆる業界に精通しているわけではないので、誰に対しても分かりやすく説明することが非常に重要になります。
デメリットを上回るメリットがある
日本政策金融公庫融資のメリット・デメリットを日本政策金融公庫元職員の立場からご紹介しましたが、デメリットよりもメリットのほうが大きいと感じます。
特にこれから創業を予定している方にとっては、日本政策金融公庫の融資から着手すべきです。自身の古巣を持ち上げるわけではありませんが…
日本政策金融公庫融資のメリット・デメリットを本記事で理解して融資を申し込むことを決めたのなら、次は融資までの大まかな流れを理解していきましょう。
本記事以外にも申込前に知っておきたい予備知識がありますので、ぜひチェックしておきましょう。
融資申込ができるようになるまでここから少し長い道のりですが、挫けずに頑張っていきましょう。