本記事ではこのような疑問を解決できます。
本記事で分かること
- 新規開業実態調査は公庫の『創業融資先』に対する調査。つまり、公庫の創業融資事情が分かる。
- 公庫創業融資先の開業時の年齢は上昇傾向。経験豊富な創業予定者を引き続き評価している。
- 自己資金は開業費用の23.9%は用意したい。
新規開業実態調査とは?
新規開業実態調査とは日本政策金融公庫の総合研究所が毎年行っている調査です。
注目すべきは、調査対象が日本政策金融公庫の創業融資先なのです。
つまり、この調査結果は公庫が実際に創業融資をした企業の平均値を知ることができるのです。
わざわざ公庫から、
と教えてくれるわけですね。
創業予定者から見れば、これは利用しない手はないです。
2021年度の新規開業実態調査結果を大解剖!
新規開業実態調査の最新版である『2021年度新規開業実態調査』が公表されていましたので、実際に新規開業実態調査の中身を見ていき、創業融資攻略の糸口を探っていきましょう。
開業時の平均年齢
まずは創業時の年齢に関する調査結果を見ていきましょう。
開業時の年齢は「40歳代」が36.9%と最も多く、次いで「30歳代」が31.3%という結果です。
主な創業融資先が「40歳代・30歳代」であることが長期的には変わっていない状況です。
平均年齢の推移も上昇傾向にあることからも分かる通り、公庫が創業融資を行っている事業者の年齢が年々上昇しています。
創業融資を受けている事業者の年齢が上昇しているのは高齢化によるものでもあるとも言えますが、次に紹介しています勤務キャリアも関係しているように感じます。
勤務キャリア
斯業経験とは「これから創業する事業に関連した業種での経験」のことを言います。
公庫はこの斯業経験を創業融資の審査の重要なポイントの1つと捉えています。
創業融資先のうち斯業経験がある事業者は82.2%と高い水準となっており、公庫は斯業経験がある事業者を評価する傾向にあると言えます。
例えば、友人から、
とお願いされたとき、あなたならどうしますか?
おそらく、断るのではないでしょうか?
断るに至るまでに「あいつがゼロからラーメン屋やる?いやいや、競合が多いジャンルで生き残れないでしょ…」と頭のなかで考えると思います。
公庫も同じような考えたをしているということです。
そして、斯業経験の年数にも注目してみましょう。
斯業経験の平均値は15.1.年、中央値も14.0年となっています。
どうでしょう、平均値も中央値もけっこう長いと思ったのではないでしょうか?
これは、事業を軌道に乗せるために必要な素地を作り上げてきた30歳代~40歳代に創業融資をしていると言えます。
先ほどご紹介した開業時の平均年齢が上がっている背景には、経験豊富な創業予定者を公庫では評価していると言えるのです。
また、管理職経験ありは66.9%、管理職経験の平均値は11.4年、中央値は10.0年と、斯業経験だけではなく管理職でのマネジメント経験も評価していることが分かります。
開業費用
開業費用の分布を見ると、500万円未満が42.1%ともっとも高く、開業費用500万円未満で創業する割合が長期的に見て高い水準となっています。
開業費用の平均は941万円と調査開始以来もっとも低い数値となっています。
「まずは小さく始める」というスモールスタートが浸透していることもありますが、そもそも費用が大きくかからないIT系での創業が増えていることが関係していると思います。
資金調達
最後に必要となる開業費用をどのように工面しているのかを見ていきましょう。
開業時の資金調達額の平均は1,177万円と調査開始以来もっとも低い数値となっています。おそらく開業費用の減少と連動しているのでしょう。
この項目で絶対に見てほしいところは資金調達額の平均に占める自己資金の割合です。
自己資金の平均額は282万円と、平均資金調達額(≒開業費用)に占める割合は23.9%となっています。
「自己資金はどれだけ必要ですか?」というご相談を本当に多く頂きますが、公庫が創業融資の支援をしている事業者の自己資金割合の平均が23.9%だということがこの調査から分かります。
ご自身の事業を始めるにあたって、必要な資金の22.2%ほどは自己資金を用意しておきたいというところです。
まとめ:経験と自己資金が重要視される流れは継続している
今回は2021年度新規開業実態調査から創業融資のポイントを探ってみました。
日本政策金融公庫が公表している以上、この調査から汲み取れる創業融資の傾向をしっかり掴むことができれば、創業融資をスムーズに進めることができるようになります。
あなたが公庫からの創業融資をもとに開業を考えているのならば、調査結果から見えるポイントと現状を比較して創業融資の準備を行っていきましょう。